龍田比古の奥山日記

愛する人を追い、斑鳩、三郷、平群、生駒、安堵…龍田川流域など大和を歩いている。気持ちのいい石室によこたわるかとおもえば、万葉のイリュージョンに垣間見たり、十一面観世音が暗号を呟く。…生駒郡という現代の地名を旧平群郡と読み替えると、いろいろなことが見えてきました。

再び宇陀の水分神社、心のふるさと宇陀

近鉄の酒蔵を目指すウォークに参加、大好きな宇陀を歩いて巡ることができた。
充分歩いたし、神社仏閣を訪れたし、満足。だから別に何も書くことはないけど、やっぱり宇陀を自慢したいような気になる。
今までの自慢の宇陀は室生寺であり、佛隆寺の千年桜、そして又兵衛桜。何度も訪れそのたびに感動して帰るありがたいふるさと。

宇陀は大概バイクで訪れるが今回は電車、榛原駅で降りると先ほどまで近鉄急行の先頭車両の先頭座席に座る、子どもじみた向かいの席の男が担いでいた荷物を解いてピンクの美しい自転車を組み立てているではないか。う〜ん、あこがれるなぁ、帰ったらすぐに自転車をリニューアルしよう。

陸橋改札口から降りてコース地図を頂き、駅前の観光案内所に入った。熱意のある親切なガイドさんに出会い、少し長居したかも知れない。ガイドさんが大事にして誰にでも配るわけではないちょっと古い地図手帳を頂いたので、それを見ながら歩くことにした。

この写真のモノ、最初は何か分からなかった。近づくとバス停のベンチであることが分かった。なんと豪華で素敵なベンチだろう。まるで暖かく包み込まれるように座れる。うずくまればまるで胎児になる。そこにたまたま通りがかったクロネコさんに「宇陀ではベンチはみなこんなのですか、すごいですね」と声をかけると「…(首をかしげてニッコリ)」感じいい

車なら目的大宇陀まで7kmとある。途中の社寺全部見たら歩数計で24,573歩18.24km歩いた。もう3日になるが当日痛かった左足でなくて、大丈夫だった右足が翌日から痛くなり、気づくと知らぬ間にびっこを引いている始末。小さな故障がなかなか治らない。悲しい。歩く基本について反省しきりの今日この頃である。

最初の神社は有名な宇太水分神社。有名だが水分神社は3つもある。清々しい、来てほんとうによかったと感じた。はじめてきたのに懐かしい。故郷か。

参道の鬱蒼とした杜とあまり見たことのないシンプルな神明鳥居(伊勢鳥居)が高貴な神聖さを感じさせる。

あまりの巨大な切り株に度肝を抜かれる。いったいなんだここは。もう見ないわけには行かなかった。

ここが、これが本日最大の収穫となる。

歩く古い途からぐるっと回り込んだほうに入り口があった。八坂神社祇園さんの宇陀支社か。
この巨大な切り株の前に立つだけで、神社を建てる気持ちが分かる。はるか弥生の祖先の立った場所にまさに立っているという幻想がありありと浮かんでくる。大和の「奥」にくるまでもなく、いたるところに神木が立ちかしらを下げ手を合わせていた。弥生になると水田開発も進み、森を切り開き水を引き、豊かな実りに幸福を感じていた。欲望は果てしなく豊かな自然を食べつくす怪物である。心の葛藤が生み出したモノが神であり、感謝しざんげする場所が神社だった。

お寺もあった。黄檗山万福寺の末寺である蓮昇寺、真新しい懐かしい竜宮城のような門をくぐり参拝した。

鐘のような輪郭の窓。この様式は火灯窓(かとうまど)といい、上は炎のデザインという。

振り返ると門の側に万葉歌碑。日曜日の宇陀は人影が少ない。万葉歌を歌うのは蕗の薹(フキノトウ)、歌碑の前にいくつもいくつも楽譜の音符のように咲いていた。視線を上げると倭健の国偲びの歌のような麗しい景色があるではないか。なんと綺麗な山里なんだろう。ここに寺を据えた坊様の気持ちが分かる。きっとこの景色が必要だったんだろう。

八咫烏神社本殿、拝殿と本殿の間に急な高い石段がある。上りながらくだりの恐怖を予想していた。手すりが設置されていたので平気で降りることができた。

観たことのある石造物をどう写そうかと迷っていたらいつの間にか男の子が入っていた。どこの誰だか知らないがありがとう。

堤を歩く芳野川(ほうのがわ)から盛んに聞こえる雲雀(の子)の声を撮影しました。ここは歌野町か。マンホールがこのデザインになっていた。

本日二つ目の大宇陀にある水分神社。国宝の本殿。この色彩は仏教の影響なのかなぁ。白木で造った水分神社は落ち着いた我が家、マイルームという感じ。

あをによし大宇陀の水分神社は飾った客間か。美しい。異国の色彩を受け入れた祖先の気持ちが分かるような気がする。
垣間見る国宝にふさわしい美しい彩色。脚立と双眼鏡でゆっくり鑑賞したいものです。

このあと両足が痛くなる悲劇が訪れた。

その後、イベント(ポスターが見える)の最後を飾る酒造訪問と試飲の喜劇となった。

美味かった。2回もお変わりしてほろ酔い気分で酒造見学。酒を買ったのは当たり前だが、どうしてかブランド名の入った前掛けを買っている。酔いに任せて買ってしまった。でもそれを使わず、リュックの奥にしまうという理性も残っていた。
ほろ酔い気分で松山の町並みを丁寧に眺めながら歩いたら、チャーターバスはすでになく、1時間に1本の路線バスに乗って帰った。車で来ないと不便な所だと思った。みなが車で来るから路線バスはますます少なくなる。やはりたまにウォーキングすることが大事なんだと、感じたような次第。お粗末さん