龍田比古の奥山日記

愛する人を追い、斑鳩、三郷、平群、生駒、安堵…龍田川流域など大和を歩いている。気持ちのいい石室によこたわるかとおもえば、万葉のイリュージョンに垣間見たり、十一面観世音が暗号を呟く。…生駒郡という現代の地名を旧平群郡と読み替えると、いろいろなことが見えてきました。

正倉院展〜奈良公園

私どうも飲むテンポが速いのは安物のコップで飲むかららしい

瑠璃坏(るりのつき=ガラスのさかづき)こんな素敵な杯で飲んだらさぞ美味かろう、ゆったり酒と杯を眺めながら
図録には「見込み」も見える。(カラー写真にして欲しかった)深い青は好きな色


ギターもほしいなぁ。螺鈿紫檀琵琶こんな豪勢なギターは存在しないけどね。
この蔵にはいったい何台の琵琶があるのか。昨年のすごい琵琶の写真を探したら、なんと8年も前に見た琵琶(楓蘇芳染螺鈿槽琵琶)、きれいやったなぁ。いつもいつも正倉院展の螺鈿には脱帽。
紅牙撥鏤撥この色、雰囲気は去年に見たことがある。こいつはまさに去年、紅牙撥鏤尺(染め象牙のものさし)で目盛りが美しく刻んでありグッズとして売っていたので買いました。
悠久のときを隔て拝見すると去年も8年前も大して違いはない。
撥鏤の撥はきっと駄洒落で思いついた作品やろ、とつぶやくと耳に障ったのか老紳士が、そうじゃありません、と話しかけてきた。象牙は曲がっている、象牙は中空である。この撥ぐらいの寸法を取ろうとしたら巨大な(と右手をいっぱい広げる。会場満員の観客の何人かが驚いて迷惑そうによけて通る)象牙が必要だったことでしょう。ああ、この紳士は相当感動してる、こちらまで嬉しくなった。胸からあふれるような言葉遣い。詠嘆。紫檀や黒檀はインドやスリランカ産でしょう、よくもまぁ輸入できましたね、と返すと紳士は、そう、あちらから(また右腕をいっぱいに伸ばす、誰にも当たらないのが不思議)輸入したものです。貿易があったに違いありません。と断言するのも夢見心地のように私には見えた。紳士の腕に注意しながら周りの客の何人かがうなづいている。会場の何割かは感動で平和でしかも不思議な連帯感のような幻想に満ちている。

木画紫檀双六局。聖武天皇ご遺愛と「国家珍宝長」書かれている実物だそうだ。これも紫檀だから材木はスリランカからか?グローバルとかいうけど昔もグローバルやった。双六で使った駒、水晶にガラス、ほんまに綺麗。今回ガラス作品の美しさが際立ったように思い、作家の広沢葉子師などと一緒に見たら見えないところを見せていただけるだろう。

この色、佇まい、一番好き。銀平脱八稜形鏡箱。手前に付く金具は鍵だとか

さて、今年一番のお気に入りといえばこの箱。密陀彩絵箱(みつださいえのはこ)。鳳凰と恐竜のような鳥がぐるぐる回り、唐草模様や雲まで渦に巻き込まれて回ってる!この動き。古代のアニメーション。怪鳥の笑顔の楽しさ。見飽きることがない。買ってきた絵葉書だけで簡単に正倉院展を紹介したが、他にも多すぎてとても書ききれないほど、昨日は感動して書けなかった。
例えば、ピンクに発光するように見える犀角杯(さいかくのつき)、酒なら二合は入るか、シンプルで美しい。金銅八曲長坏(こんどうのはっきょくちょうはい)も同じぐらい大きい。いったい奈良時代の酒のアルコール度数はどれぐらい?それとも大酒飲みばかりやったのか。紫檀金銀絵書几(したんきんぎんえのしょき)は巻物を少し斜めに立てて巻きながら鑑賞できるブックスタンド、綺麗。ガラスの小さな尺や小刀の腰飾り、いろいろじゃらじゃらと腰周りにもぶら下げていたらしい、当時の役人や貴族は。

日本人なのに読めない巻物(経典や古文書)が多く展示してあった。読めたらどんなに幸せになれるか分からない。その中に税収のまとめのような文書があった。それを見ると最初に平郡にたくさんの記述があり、生駒は往馬大社が何行か少しだけ。平郡はかなり重要な地域のひとつであり、生駒はその奥の院のような感じでなかったか。そんなことを思いながら帰途に着いた。奈良公園を抜けると近鉄奈良駅すぐ。

落ち葉と小石は珍しくない

誰かの作品なんだろう。秋を集めたのか。寒くならないように秋を貼り付けたのか。なんともないような感じであるのに綺麗に見えた。