斑鳩藤ノ木古墳の石室に3分間入ったよ
平成25年5月4日藤ノ木古墳石室特別公開に参加した。感動
9時ごろには到着したのに長蛇の列、列の先頭はテントの中にぎっしり詰めて座っている。並ぶのは嫌いだ。モノには両面ある。並ぶことに一分の利があるとすれば、行列のほとんどがただひとつの熱でつながっている。三郷から来られた親子連れ。
できるだけ団欒を邪魔しないようにした。水入らずというではないか。口を出さず、目を合わさず。でも説明プリントを頂き、恩を感じていた。そこに奥さんが「両袖式って何?」と口にしたのに反射的に身振り入りの説明をしてしまった、教えたがり屋にはなりたくなかったのに。かわいい子どもにかわい両親。
出口で学生さんが箱を抱えて笑顔で待っていた。なけなしの硬貨でニッケル色を全部募金箱に入れた。(1円玉5円玉10円玉は賽銭用に残しておいた。)
募金の勢いで(あさましい)墓の中で気にかかった思い付きの疑問で(まぁ思いつかない疑問も無いが)、その愚問を作業服の学芸員らしき役人にお尋ねした。未盗掘の理由、羨道の向き(方角が真南でない)、周りの状況(西岡棟梁のお宅もある西の里)など。あまり昔のことを聴くので偉い先生を呼んできてくれた。昔といって古墳の築造当時の話で、関係者なら知っていても不思議ではない。
なんとその会場の責任者らしき方にすごい事実を教わった。
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閉塞石を取り外すと外気が石室に入り込んだ。石室は白い靄に包まれ、とても幻想的であった。
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そのお方の師匠が、被葬者の葬送以来最初の入室者であった、師匠から聞かれた生々しい感動を、文化財の保護に献身する心の支えとされているようなニュアンスで語っていただいた。
ぼくも石室に吹き込んだ夏の風を想像した。耳元を抜ける温度、音、石室内の気配、…もし映画を作るなら、どうしても書き出さねばならないことごとを。
それと、そんな気密性を実現した確かな腕の持ち主、1400年以上昔の石工や土木建築家の職人気質を。ついでに申し上げるなら、その職人たちの使った道具類、製作過程を。完璧ともいえる気密性と矛盾はしないが不本意な石棺内部の水。そしてもしあるのなら知りたい、その水の恩恵を。
僕のような専門家でも考古学ファンでもない、なんでもない一個のただの歴史好きに過ぎない見物人に発掘調査のおりの秘密を明かしていただいた。初めての石室入室の感動にその場を去りがたく、思いつきの質問のためにわざわざ偉い先生を呼んでいただいた。嬉しかった。先生の感動的なエピソードだった。
近くの斑鳩文化財センターでその先生の名を尋ねると平田政彦先生であると教わった。また「斑鳩町の古墳」を求めたときも丁寧な説明を戴いたのが、荒木浩司先生。斑鳩町はこの親切な先生方が文化財を護っている。平群町の村社仁史先生にも感動したが、なんの利益にもつながらないよそ者にさえ、誠実な教育者でいてくださる。 深い感謝の念と、恥ずかしながら勉強するぞと勇気が湧いた。
文化財は非公開で保存するだけが保護ではないという精神であろうか。
背後の丘を少し登ると池や中学校、県民運動場がある。陶製の椅子円卓の側に風景の説明板が設置してあった。こういう案内が古墳にはとりわけありがたいと最近思うようになった。