龍田比古の奥山日記

愛する人を追い、斑鳩、三郷、平群、生駒、安堵…龍田川流域など大和を歩いている。気持ちのいい石室によこたわるかとおもえば、万葉のイリュージョンに垣間見たり、十一面観世音が暗号を呟く。…生駒郡という現代の地名を旧平群郡と読み替えると、いろいろなことが見えてきました。

映画『ヒューゴの不思議な発明』

ボクは初めて映画を見た最初の作品のことを覚えていない。
貧しかったので、そうそう行く機会はなかった。でも近くの商店街に映画館があった。
通りから映画館までの少しの通路にはアイスキャンデー屋、食い物屋、飲み屋などが店を連ね、独特の臭いと少し不良っぽい雰囲気が漂い、不気味な空間にあった。
地蔵盆や夏休みには近くの酒蔵や宿屋の庭や小学校で映画を見たこともあった。
きりきりフィルムが巻き取られる大きなノイズ、ファンの回転音が作品の音声よりも大きく聞こえるような映写機の近くに居るのが好きだった。映画の作品より、機械から生きた人間の映像と音声が生み出させるメカニズムにうっとり眺めているのが好きだった。
映画館や学校の授業以外では野外で催されたので、風がスクリーンを震わせ、帆船の帆のようにおおきく風をはらませ映像が歪曲されると、またすごく不思議な映像になり、二度とないイメージに目を見張った。
もし映画が見られると言う機会は必ず見たような気がする。
誰と行ったのか、映画館の映画は幼いボクには恐ろしい目を覆うような場面が必ずあるような気がして怖いものと言う感じ。未だにグロテスク、ホラー、残虐イメージには弱い。丸木俊の原爆図でさえ、恐ろしく見る気がしない。
学校映画は好きだった。安心してみていても裏切られることはない。ディズニーの作品を一通り見せてもらったような気がする。
好きな映画はいくつかある。
中でも映画の映画といえば、「ニュー・シネマ・パラダイス」何度見ても胸がキューっと締め付けられる。
同じような映画を見た、「ヒューゴの不思議な発明」友人から薦められ見たら、キューっとなってしまった。その映画はなぜかモノクロの無声映画のスタイルをとっているのかと誤解していた。
しかし歴史のフィルターが掛かった、美しいパリの色を見せてくれた。しかも3D作品で、ドームを廻って上る階段や巨大な時計仕掛けを立体的に見せた。風景は1930年代のパリを写しているらしい。
この映画は☆☆☆☆☆。
なぜか鉄道のターミナルの時計塔にすむ少年と駅の風景、そこで出店して営業する何人かの営み、公安官とその目から隠れる少年との対立、生活のために盗みを働く主人公。主人公と暮らすからくり人形の謎。
映画というものがすでに発明されていて、その可能性が無限に思われた時代、一人のマジシャンが自作カメラを製作、映画作りに成功を収める。しかし世界大戦により時代と大衆のニーズの変化に取り残された没落監したかつての監督兼役者兼制作者のおもちゃ屋。おもちゃ屋に出入りする少女。
少年と人形とおもちゃ屋と少女が絡んで感動的な映画の映画が生まれる。
あなたもキューっとなるだろうか。